集客力向上のポイントは過去の成功事例
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
介護事業所の「売り」の見つけ方
- 本レポートでは、介護施設における運営実務のポイントを現場のコンサルティングの実例を踏まえお伝えする。
- 事業所の「売り」の本質を理解した上で、そのような「売り」を生み出すために何をすべきかについて考察する。
事業所の「売り」の掘り起こし
前回は、介護事業所の「売り」の本質とは何かについて考察を行った。
端的にまとめると、事業所の「売り」になるのは、介護サービスにより利用者に満足いただけたり、良い成果の上がった取り組みであるべき、ということだ。
そして、そのような取り組みは、事業所により多い少ないの程度はあるが、必ず誰かが、何かを行っているはずである。つまり、事業所の「売り」とは、新しく何かを作り出すものではなく、普段行っている業務の中から良質で喜ばれるようなものを拾い上げて磨いていくものなのだ。
「売り」をそのように解釈した場合、「うちには「売り」がない」と悩んでいる管理者の方も、「単に私が気づいていないだけでは」ということに気づくのではないだろうか。
そうであれば、自事業所の「売り」を作るために管理者が今行うべきは、「他施設で行っていないサービスはなにか」とか「画期的な新しいアイディアはないか」などと悩むことでないと気づくだろう。
それよりも、職員との会話の中で「今までに利用者に喜んでもらえたことは何?」「あなたが自信をもって行っているサービスはある?」と聞き、それを集約していくことのほうが、よほど「売り」を作りだすのに有効な取り組みとなる。
さらに、正確に、情報収集を行おうとするのであれば、「どのような課題(ニーズ)を持った利用者に」「どのようなサービスの工夫を行ったら」「どのように良くなったか(喜んでもらえたか)」という内容を意識して聞くと、介護サービスの成果として打ち出しやすくなる。
もし、会話で引き出しづらいのであれば、アンケート形式で月に1枚でもこのような内容を思い出していただき書いてもらえるとよいだろう。いずれにせよ、それらが事業所の良さを伝える「売り」の種になっていくのである。
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成功事例がなぜ事業所の「売り」となり得るのか
このような問いを通じて職員から出た情報とは、いわゆる介護サービスを通じた成功事例である。
成功事例とは、すでに実績として上がったものであり、同様のケースの方に同様の取り組みを行えば、同様の成果を上げることができる可能性の高い、再現性のある例ということになる。
言い換えると、それは、外に持って行ったときに、「そのような状態の方であればお任せください!必ず喜んでいただけると自信をもってお勧めします。なぜなら、このような事例があったからです!」と堂々と伝えられる事例であるとも言えるのだ。
果たして、そのように強調して伝えられるものを事業所の「売り」と呼ばず、何を「売り」と呼ぶべきであろうか。
成功事例の積み重ねが職員の自信に繋がる
過去に1事例だけしかなかったものであれば、それほど自信をもって伝えられないかもしれない。
しかし、仮に事例のケースに興味を持ってもらうことができ、同様のニーズを持つ利用者をご紹介いただくことができるようになれば、最大限の努力を行い、成功の2事例目にすればよい。
そうすれば、職員も自信を深め、達成感とやりがいから意欲的に仕事に取り組むようになり、さらに同様の成功事例を増やすことに貢献していくことになるだろう。
その繰り返しにより、小さな種でしかなかった「売り」が、堂々と胸を張って近隣に伝えて回ることのできる「売り」に成長していくことになるのである。
とはいえ、事業所の成功事例を掘り起こせたとして、それをそのまま「売り」として伝えるには無理がある。
営業に訪れて、相手の貴重な時間をいただき、長々と事例の話を聞いてもらえることなど稀だからである。そうであれば、事例は集約して伝えやすい言葉にまとめ、さらには言葉で伝えるだけでなく、資料などで見ていただけるような工夫をしていかなければならない。
次回は、端的に伝える工夫についてお伝えをしていく。
レポートの執筆者
沼田 潤(ぬまた じゅん)
株式会社 日本経営 介護福祉コンサルタント
株式会社の運営する介護付き有料老人ホームにおいて介護職員から施設長までを経験後、北京に駐在し海外事業にも従事。2015年に日本経営に入社、主に介護施設における稼働率向上支援、介護サービスレベルの底上げ支援などを担当する。介護福祉士。
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